大中小の集い

「大中恩の小品を歌う集い」 https://ohnaka100.hp.peraichi.com/ の説明と関連の?読みものです

今回取り上げる曲たちのこと

せっかく立ち上げたブログなので、今回ご用意いただく曲について、自由に書いてみました。知らない曲、よくご存じの曲、それぞれに私からみた風景をお楽しみいただければと思います。

わたりどり

大中恩混声合唱曲として最も古いもののひとつ。短い小品ながら、ハーモニーの進行や跳躍の多いメロディが意外に難しく、伸び伸びと歌うのは大変だったりします。コール・Megやメグめぐコールの演奏会では、この曲がピアノ伴奏に乗って毎回オープニングとして歌われていましたので、今回のイベントでも同じように最初に歌います。キーの異なる二部合唱版(キーはGです)も合わせて取り上げますので、味わいの違いをお楽しみください。ちなみに、無伴奏のオリジナルはBbですが、ピアノ伴奏版は半音低いAのキーで歌われます。

草原の別れ

2022年度の全日本合唱コンクール課題曲として多くの団体に歌われた作品。作詞の阪田寛夫大中恩のいとこであり、二人で「おさの会」という創作ユニットとしても活躍していました。そうしたコンビならではの「曲先」の作品ですが、先に詩が出来ているのと比べて美しく格調高い言葉が並んでいるのを作曲者は面白がっていたようです。無伴奏で演奏される場合がほとんどですが、今回はピアノ伴奏付きでお楽しみいただきます。

旅に出よう

1976年、NHK全国学校音楽コンクール高校の部課題曲として作曲されました。吉原幸子による書き下ろしの詩と、大中恩ならではのセンチメンタルな音楽性が見事に溶け合った作品で、約3分の短い時間の中をさまざまな光景が通り過ぎていきます。コンクールという場を離れても、小品を愛する大中恩のセンスが美しく現れた作品のひとつだと思っています。

水のうた

1982年、同じく「Nコン」高校の部課題曲として多くの高校生に歌われました。叙情性の強い前作に比べ、こちらの曲は「溌剌」という言葉を想起させられる内容です。前作のイメージが女子高校生のポエジーなら、こちらは男子高校生の秘められた可能性という感じでしょうか。高校生たちが一生懸命歌ってくれる姿を想像しながら書いた作曲者の思いが伝わってくるようです。合唱のフィールドでは「筑後川」などで知られる丸山豊が作詩しています。

かたつむりのうた

1972年、こちらは同じ「Nコン」でも、中学校の部の課題曲(混声三部)として書かれました。阪田寛夫の独特なペーソスをたっぷり含む言葉に、このコンビの作品に多い付点リズムが味わい深く寄り添います。今となっては、こうした内容を中学生たちが歌う姿を想像するのもいとをかし、というところがありますね。余談ながら、この曲集の中で唯一私が知らなかった曲です。

朝ゆえに

谷川俊太郎の詩による1977年作品。多くの名小品群が生まれた時期の作品で、それゆえの充実感、そして簡潔さを感じさせます。冒頭のアルト・テノール2声によるテーマは、アルトとテノールの調和を大事にしていた大中恩らしい一節だと思います。短い時間のなかに錯綜し移りゆく思いと光景、そんなものが浮かんでくればいいなと思うのです。

晝下がりのジョージ

この作品は、ぜひ楽譜の歌詞ページを最初に見ていただきたい。もう完全に阪田流のワルノリ言葉遊びの世界なのですが、そこに何するものぞと立ち向かう作曲者の音楽を「おもしろが」り、それを外へと伝えることがこの作品の真骨頂を生み出すのです。この曲を松田トシさん(「うたのおばさん」という番組をご存じの方は今日ここにいないかも知れません…)の前で披露したときに、松田さんが思わず吹き出して「…丈夫な情婦って…笑」と笑いながら仰った時の大中先生の得意そうな顔は、私にとって忘れられない一コマです。

じゃあね

大中恩小品の中でも、とりわけ人気のある一曲。「土田藍」名義(大中恩の作詩者としての変名です)による作品群を除けば、もっともセンチメンタルな作品のひとつです。今回のエディションでは中間部のメロディがソプラノパートに振られていますが、多くの人には男声のソロとして耳馴染みなのではないでしょうか。この変更に伴い、「さよならよりもさりげなく」の部分が、歌詞付きの四部合唱になっているのも興味深い点です。

サッちゃん/おなかのへるうた

説明不要と申しましょうか。阪田・大中コンビによる“こどものうた”の2大名作です。この二部合唱版は音域も狭いので、いろんな混ぜ方や編成で歌ってみるのが楽しそうですね。

わたりどり(二部合唱版)

この編曲も、誰にも歌いやすい音域による二部合唱になっています。男声パートのみなさんは、この機会にぜひメロディにも挑戦していただき、この曲の知らなかった魅力に近づいていただきたいです。

九月

またまた「おさの会」コンビによる付点バラード。秋は恋人たちの季節、という古くも不朽のテーマを、このお二人ならではの味わいでさらりと聞かせます。歌う側は歌詞を追いかけるのが結構大変という噂も。2001年の作品。本作品も私はこの楽譜で初めて知りました。

かなしくなったときは

大中歌曲の世界では、寺山修司作品の比率は意外と高いのです。その中でも指折りの一曲がこちら。オリジナルは歌曲版ですが、この二重唱はとてもドラマティックで良いのです。今回は合唱として取り上げますが、ぜひお相手を見つけて、メゾソプラノバリトンの二重唱で歌ってみていただきたい作品です。

きみ歌えよ

今どきは信長貴富さんの合唱曲が有名ですが、大中恩の「きみ歌えよ」もいいよね、と思っていただきたい一曲。谷川俊太郎によるシンプルな詩がストレートに口から出てくる、歌ってスッキリの作品です。歌曲版、混声4部合唱版もあります。

無伴奏の四つのうた
わたりどり/そよ風/別れみち/花のある杜

まとめて歌われる機会はあまりない四作品で、一曲目の「わたりどり」が中でも良く知られていますが、それぞれ初期作品らしい小ぶりな味に満ちています。中でも「花のある杜」は作曲者お気に入りの作品として知られています。

ピアノ伴奏の五つのうた
海の若者/秋の女よ/花笛/沼/別れの歌

これも2曲目の「秋の女よ」がよく知られた作品で、全日本合唱コンクールの課題曲として歌われたこともありますが、ソロ泣かせの一曲でもあるのですね…。私はテノールによるソロが好きです。どの曲もコール・Megの十八番と言える作品たちで、短い中でのテンポ変化の味わいをとても素敵に聴かせていたのが思い出されます。